なにが起きたのか、朱寿はエスチュアリーと一緒に立ち尽くしていた。
向かってくる研究員たちを伸していれば、突然異国の言葉を使って現れた男。どうやらトメニア語を使うらしい。しかも、普通の研究員とは違ってどうやら戦闘慣れしているようだ。とんだ伏兵だ。
傘も取られた。
「返して」
素直に返してくれるとは思っていないが、とりあえず返せという。案の定、男は投げ返してきたが鉄柱仕込みだったのが仇となったのか、ちょっと引っ張っただけでは抜けない。そもそもコンクリートに突き刺さる時点でどれだけの馬鹿力なのか。
そしたら今度は、威勢よく走りこんでくる車が一台。運転席から威勢良く出てきたのは、美しい金髪を高い位置にくくった女性。軍服を着ているが、天照神国のものでないのは確かだ。
溌剌としてそうだがとりあえずの第一印象は、「身長が高い」だ。
そして彼女もまたトメニア語を発する人らしい。トメニア語を解するエスチュアリーですら、話についていくのがやっとらしい。トメニア語がわからない朱寿は既に傍観している。
どうやら、研究員とは顔見知りらしい。
しまいには「私は、君たちの味方だよ椿組のお嬢さん方!」と言い放った。
言葉も無い。
――チュアリーさん
――どうしました
――この人たちほっといて、戻ろう
――そうですね、もうすぐ撤退命令もだされそうですし
するりと髪を絡ませ、日傘を抜く。微妙に芯が曲がっていた。終わったら、修理しにいこう。